Googleの生成AI、BardあらためGeminiが画像認識できると聞いたので、試してみました。

果たして、小論文のグラフ問題を解くことはできるのか?

高校生の正答率50% 折れ線グラフの意図に気づこう

まずはこちらのグラフから。

小論文でグラフ問題を教えるときに最初に使う問題です。拙著「小論文のオキテ55」にも登場します。

これは小論文の問題です。このグラフを見て問題提起をしてください。

「小論文を書きなさい」ではなく「問題提起をしてください」にしました。今回は「グラフを読み取れるかどうか」を試したいので。

実際の入試でも問1で資料の説明、問2で意見論述という形式が一般的ですからね。

この問題、高校生に出題すると半数以上が「米国の患者が多すぎる」と答えます。

でも、もし「米・英が多く、日本が少ない」という意図なら出題者は棒グラフを使ったはずですよね。折れ線グラフということは「変化=増減を見ろ」というのが出題者の意図です。

正解は「1993年以降、米国と英国の患者が減っているのに日本の患者は増え続けている。これはAIDSの発症者を減らす取組みが日本では行われていないことを意味している」です。

もし知識があれば、「1993年に抗ウイルス薬が発明され、HIVに感染しても抗ウイルス薬を飲み続ければ一生AIDSを発症せずに済むようになった」まで言及していたら模範解答です。

さあ、Geminiちゃんの解答はどうでしょう?

はい、このグラフは米国、英国、日本におけるAIDS(後天性免疫不全症候群)を発症した患者の報告数を示しています。このグラフを見て、いくつか問題提起をしたいと思います。

まず、各国のAIDS患者数の推移を見ると、米国と英国は2000年から2002年の間に患者数が減少している一方、日本は患者数が増加しています。これは、各国におけるAIDS対策の差が影響していると考えられます。

次に、AIDS患者の年齢層を見ると、米国と英国では20代から30代の患者が多い一方、日本では40代から50代の患者が多いことがわかります。これは、各国の性文化や感染経路の違いが影響していると考えられます。

さらに、AIDS患者の性別を見ると、米国と英国では男性の患者が多い一方、日本では女性の患者が多いことがわかります。これは、各国の性行動や感染リスクの違いが影響していると考えられます。

最後に、AIDS患者の社会経済的地位を見ると、米国と英国では低所得者層の患者が多い一方、日本では高所得者層の患者が多いことがわかります。これは、各国の医療制度や社会保障制度の違いが影響していると考えられます。

これらの問題提起を踏まえて、今後の課題としては、以下が挙げられます。

このグラフは、AIDS患者数の推移を示すものであり、AIDSの流行状況を理解する上で重要な情報です。しかし、このグラフだけでは、AIDSの流行状況を完全に理解することはできません。AIDSの流行状況をより詳しく理解するためには、他の情報も合わせて分析する必要があります。

例えば、AIDS患者の死亡率や治療率、AIDSに対する社会的な認識など、様々な情報があります。これらの情報を合わせて分析することで、AIDSの流行状況をより詳しく理解することができ、より効果的な対策を講じることができるでしょう。

このグラフは、AIDS患者数の推移を示すものであり、AIDSの流行状況を理解する上で重要な情報です。このグラフを見て、AIDS対策の重要性について改めて認識することができました。

グラフの要点は読み取れている!

1.では「米国と英国は患者数が減少している一方、日本は患者数が増加しています」と、一番大事な部分を指摘できています!

高校生の半数が引っかかる問題を見事クリアしました。

まあ、減った時期が「2000年から2002年の間」になっているのは・・・小さなミスとしておきましょう。

途中からなぜか創作を始めるGeminiちゃん

ところが、2.以降になると不思議なことを言い始めます。

2. 次に、AIDS患者の年齢層を見ると、・・・

3. さらに、AIDS患者の性別を見ると、・・・

4. 最後に、AIDS患者の社会経済的地位を見ると、・・・

このグラフのどこに年齢や性別や社会経済的地位が書かれている???

この辺の挙動はChatGPTに似ています。情報が足りない分は勝手に創作して補うんですね。

生成AIはあくまでも「自然な文章を並べるAI」であって、「正しく考えるAI」ではないようです。

高校生の正答率10%以下 相関と因果関係を区別しよう

次は高校生の正答率10%以下の問題に挑戦しましょう。2002年福島県立医科大学の入試問題です。

このグラフが意味することを説明してください。

うっかり「医学の進歩のおかげで結核による死亡率が減った」と答えたくなりますが、

よく見ると、結核菌が発見される前から死亡率は減っています

つまり「医学の進歩は関係ない」というのが正解なんです。おそらく時代的にも、衛生状態や栄養状態が改善されたと考えるのが自然です。

相関と因果関係は違う、という話です。

(もう一歩踏み込んで、「主な要因ではない」抗生物質によって耐性菌が生まれていることまで言及していたら模範解答です)

では、Geminiちゃんはどう答えたでしょう?

Gemini、高校生の上位10%には入れず

送信されたグラフは、英国における結核年間死亡率の推移を示しています。

横軸は年を表し、1838年から1960年までの範囲が示されています。縦軸は死亡率を表し、100万人あたりで示されています。

グラフによると、結核年間死亡率は1838年には4,500人近くと非常に高く、その後徐々に減少しています。1882年には結核菌が発見され、1940年代には化学療法が導入されるなど、結核の治療法が開発されるにつれて、死亡率はさらに急速に減少しました。1960年には、死亡率は100万人あたり50人以下まで低下しています。

このグラフは、結核の治療法の進歩によって、結核による死亡率が大幅に減少したことを示しています。

以下、グラフの詳細な説明です。

1838年から1882年までの間、死亡率は比較的安定しており、4,000人から4,500人の間で推移しています。
1882年に結核菌が発見された後、死亡率は徐々に減少を始めています。
1940年代に化学療法が導入されると、死亡率はさらに急速に減少しました。
1960年には、死亡率は100万人あたり50人以下まで低下しています。
このグラフは、結核の治療法の進歩によって、結核による死亡率が大幅に減少したことを示しています。しかし、結核は依然として世界的な公衆衛生上の問題であり、今後も対策を続けることが重要です。

残念!「治療法の進歩によって」と答えてしまいました。

医学以外の要因という、資料に「書かれていないこと」には気づかなかったようです。

そこで、間違いを指摘してみました。

Geminiに間違いを指摘すると・・・

結核菌が発見される前から死亡率が減っています。「治療法の進歩によって」という解釈は矛盾しませんか?

ご指摘ありがとうございます。確かに、グラフを見る限り、結核菌が発見される1882年よりも前から死亡率は減少しています。

この現象にはいくつかの要因が考えられます。

19世紀後半、英国では産業革命による経済発展と都市化が進みました。それに伴い、栄養状態や衛生状態が改善し、結核を含む多くの感染症の死亡率が低下しました。

19世紀後半、英国では結核を含む感染症の予防・対策に向けた公衆衛生政策が強化されました。具体的には、結核患者の隔離、消毒、啓発活動などが実施されました。

1921年、BCGワクチンが開発されました。BCGワクチンは結核の予防効果は限定的ですが、重症化予防効果があることが示されています。

これらの要因により、結核菌が発見される前から死亡率が減少していたと考えられます。

しかし、1882年以降の死亡率の減少は、結核菌の発見とそれに基づく治療法の進歩によるものが大きいと考えられます。

グラフを見る限り、1882年以降、死亡率はより急速に減少しています。これは、結核菌の発見によって、結核の病原体と感染メカニズムが解明され、より効果的な治療法が開発されたためと考えられます。

具体的には、以下の治療法の開発が死亡率の減少に大きく貢献しました。

これらの治療法によって、結核の治癒率が向上し、死亡率が大幅に減少しました。

以上のことから、結核菌が発見される前から死亡率が減っていたことは事実ですが、1882年以降の死亡率の減少は、結核菌の発見とそれに基づく治療法の進歩によるものが大きいと言えるでしょう。

結論

結核菌が発見される前から死亡率が減っていたのは、生活水準の向上、公衆衛生対策の強化、BCGワクチンの開発などが要因と考えられる。
しかし、1882年以降の死亡率の減少は、結核菌の発見とそれに基づく治療法の進歩によるものが大きい。
結核菌の発見と治療法の進歩は、結核による死亡率を大幅に減少させることに貢献した。

今度は「生活水準」と「公衆衛生対策」を挙げました! やれば出来る子です。

後半、やはり医学の話でゴリ押ししていますが・・・これもご愛嬌としておきましょう。

まとめ

無料版でも画像認識ができる生成AIのGemini。

グラフに示されているデータそのものは読み取ることができます。

ただ、小論文で必要な「書かれていないこと」「出題者の意図」まで気づくのは自力ではまだできないようで。

ChatGPTが登場したとき、「試験の小論文は無意味になるのか?」という不安が国語業界を襲いましたが、まだまだ人間に取って代わることはできないようです。

めでたし、めでたし?

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