受験生からこんな質問をいただきました。

言語外的な出来事が言語で表現される場合(1)その出来事に関与する特定の個体に注目し、その個体を際立たせるような形で表現を構成する傾向(2)その出来事を全体として捉え、そこに関与する個体があっても全体を含め、いわばそこに埋没させるような形で表現する傾向、がある。英語は(1)が顕著な言語であり、日本語は(2)の傾向が強い。
という仮説が課題文に加えてあります。

そこで問題は筆者の仮説に対しあなた自身の見解を書きなさいというものです。

このような問題はどうすればいいのでしょうか。。。

仮説自体に賛成か反対かを述べるのか?それとも仮説の問題?を提起してその問題分析をして解決策を出すのか?

ちなみにこれは800字制限の2019年上智大学外国語学部ドイツ語学科です。

 

こういうときは「メリット・デメリット型」の段落構成でいけます。

第1段落 この仮説が当てはまる例を挙げる。
第2段落 この仮説が当てはまらない例を挙げる。
第3段落 「こっちの考え方の方が妥当だ」

または

第1段落 この仮説が当てはまる例を挙げて、一応妥当であることを示す。
第2段落 この仮説が当てはまらない例を挙げて、別な考え方を示す。
第3段落 この仮説が妥当なのは◯◯の場合に限られる、のようにメタ視点から仮説の位置づけを説明する。

 

冒頭で「賛成/反対」を書くのはNGです。

この仮説は言語学者・池上嘉彦氏によるもので、いろんな文献に引用されている有名な仮説です。

偉い先生の学説を、高校生が簡単に否定できるわけがありません。

でも、あくまでも「仮説」なので、まだ100%正しいと証明されたわけでもない。

よく見ると正しい部分もあり、そうじゃない部分もあるかもしれない。

だから「メリット・デメリット型」で書くべきなんです。

 

それに、仮説というものは単独では存在しません。

天動説と地動説のように「仮説Aがダメなら、仮説Bかもしれない」という裏の仮説があるものです。

(実際、元の文献で池上氏もこの仮説1に対して仮説2も挙げています)

 

この出題の意図は、

ある学説を鵜呑みにするのでもなく、全否定するのでもなく、

「相対化(客観視)」するという、学問の基本姿勢を求めるものだといえます。

 

上智大学だけではありません。

「小論文のオキテPRO」で扱った青山学院大学総合文化政策学部も、フロイトとかルソーとかの古典的名著を出して

問1 筆者の主張の要約
問2 筆者への反論
問3 自分の意見

という出題になっています。3つの段落を問1〜3に分けていますね。

 

似たような例を挙げただけで、ほぼ課題文をなぞっただけの答案とか

冒頭で「私は反対だ」と言葉尻をとらえて批判する幼稚な答案が多すぎて、

大学側がキレ始めているんじゃないかと思います。

 

偉い先生の学説を相対化する。

知的でエキサイティングなゲームじゃないですか!

 

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