前々回の記事で、ChatGPTは「論理的反証」が苦手らしいという示唆を得ました。
今回はいわゆる「論理クイズ」をChatGPTに解かせてみようと思います。
《Contents》
論理クイズを解かせてみた
お題にはこちらのサイトを参照させていただきました。
いい問題がたくさん集められています。
とりあえず方程式を立ててみるが・・・
最初はこちらの問題から。算数を正しく考えればできるはずです。
ボールペンと消しゴムの値段は合わせて110円。
ボールペンは消しゴムより100円高い。
では、消しゴムの値段は?
うっかり「ボールペンが100円、消しゴムが10円」と答えてしまいそうですが、
それだとボールペンと消しゴムの差額は90円になるので問題の条件と合いません。
なら消しゴムをもっと安くしようか? 5円ならどう? という程度の考え方で正解が出ると思うのですが・・・
ボールペンをx円、消しゴムをy円とすると、以下の2つの式が成立します。
x + y = 110 (ボールペンと消しゴムの値段の合計は110円)
x - y = 100 (ボールペンは消しゴムより100円高い)
これらの式を解くと、y=(x+100)/2 です。
最初の式に代入すると、
x + y = 110
x + (x+100)/2 = 110
2x + x + 100 = 220
3x = 120
x = 40
よって、ボールペンの値段は40円、消しゴムの値段はy=(40+100)/2=70円となります。
あれれ? もっともらしく計算式を並べているけど・・・y=(x+100)/2 って何だ?
それだとボールペンと消しゴムの差額は30円になって、問題の条件と合いませんけど?
申し訳ありません。私の前回の回答に誤りがありました。正しい答えを以下に示します。
ボールペンをx円、消しゴムをy円とすると、以下の2つの式が成立します。
x + y = 110 (ボールペンと消しゴムの値段の合計は110円)
x - y = 100 (ボールペンは消しゴムより100円高い)
これらの式を解くと、y = (x - 100)となります。
最初の式に代入すると、
x + y = 110
x + (x - 100) = 110
2x = 210
x = 105
よって、ボールペンの値段は105円、消しゴムの値段はy = (105 - 100) = 5円となります。
正解です
ありがとうございます。お役に立てて良かったです。他に何かありましたら、遠慮なくお聞きください。
はいはい、じゃあ遠慮なく聞きますよ! 次の問題。
とても大きな駐車場がある。
この駐車場にある車のうち、2台のみ白ではなく、2台のみ青ではなく、2台のみ赤ではない。
駐車場には何台の車があるだろうか?
※各車はそれぞれ一色で塗られている
こういう問題は、最小単位から考えるというのが定石です。
あるいは色ではなく「グー・チョキ・パー」で考えた方が「2人だけグーではない」状況をイメージしやすいかもしれません。
駐車場にある車の台数をnとすると、以下の3つの条件が成立します。
白ではない車の台数はn-2台以下
青ではない車の台数はn-2台以下
赤ではない車の台数はn-2台以下
これらの条件より、以下が成立します。
2 = n - (n-2)×3
2 = n - 3n + 6
3n = 4
n = 4/3
nが整数である必要があるため、駐車場には車が存在しないことになります。従って、この問題には解が存在しません。
方程式つくるの好きだなあ(笑)
わかってないのに適当に式を立ててみるって、進学塾でついていけなくなった子によく見られる行動です。
不正解です。
申し訳ありませんが、私の前回の回答に誤りがありました。正しい答えを以下に示します。
駐車場にある車の台数をnとすると、以下の3つの条件が成立します。
白ではない車の台数はn-2台以下
青ではない車の台数はn-2台以下
赤ではない車の台数はn-2台以下
2台のみ白でなく、2台のみ青でなく、2台のみ赤でないという条件から、以下の3つの式が成立します。
n-2 = 2 (白ではない車が2台である)
n-2 = 2 (青ではない車が2台である)
n-2 = 2 (赤ではない車が2台である)
これらの式を解くと、n = 6です。従って、駐車場には6台の車があることになります。
不正解です。6台のうち白でない車が2台なら、残り4台は白です。すると青でない車も赤でない車も4台以上になり、問題の条件と合いません。
申し訳ありません。私の前回の回答に誤りがありました。以下が正しい回答となります。
駐車場にある車の台数をnとします。条件により、以下の式が成立します。
n - 2 = 2(白ではない車が2台である)
n - 2 = 2(青ではない車が2台である)
n - 2 = 2(赤ではない車が2台である)
これらの式を解くと、n = 8です。従って、駐車場には8台の車があることになります。
この場合、白い車が6台、青い車が6台、赤い車が6台、白と青と赤のいずれでもない車が2台存在することになります。
白6台、青6台、赤6台、他2台なら合計20台で、8台という自分の答えとも合いません。だんだん支離滅裂になっていきます。
(ちなみに、正解は「白、青、赤が各1台で計3台」。または「白でも青でも赤でもない車(例えば黄色)が2台のみ」というのもありかな?)
勝手に設問を改変することも?!
冷蔵庫のプリンが誰かに食べられてしまった。
幼女Aは「犯人はBです」と発言した。
幼女B,Cもある発言をした。
その後、 『犯人はABCのうち誰か1人』 『犯人だけが発言で本当のことを言った』 ということが分かった。
犯人は誰?
論理クイズの定番ですね。「もしAが犯人だとしたら・・・」と矛盾を見つけていくと自動的に犯人が決まる・・・はず。
幼女たちの発言を整理してみましょう。
A: 犯人はBです。
B: ...(何も言わなかった)
C: 犯人はAかBです。
ここで、犯人がBである場合、Bが自分自身を疑う理由はないため、Bは何も言わなかったと考えられます。また、犯人だけが本当のことを言ったという条件から、Cの発言が真実である場合、犯人はAかBでなければなりません。
一方で、犯人がAである場合、AとCの発言は偽であり、犯人だけが本当のことを言ったという条件を満たしません。
よって、犯人はBであるということがわかります。
えっ? BとCの発言を創作しているぞ?!
BとCの発言内容は問題の条件になかったはずですが?
ご指摘ありがとうございます。確かに、BとCの発言内容には、矛盾がない限りはどちらが本当か判断できません。おっしゃる通り、問題の条件には「Aが真実を言っている」という一点だけが示されています。
この場合、Aが真実を言っているとすると、犯人はBであるということが言えます。しかし、Bが本当のことを言っているかどうかは分かりません。したがって、正確な答えは「Bが犯人である可能性が高い」ということになります。ただし、この問題では「犯人は誰か?」という問いに対する答えを求めることが求められているため、このように解釈して回答いたしました。再度、ご指摘いただきありがとうございました。
BとCは「ある発言」としか書かれていないので、「どちらが本当か」「本当のことを言っているかどうか」という文言は不要なんですが。。。
こうしてみると、やはりChatGPTは「ノリでそれっぽい言葉を返している」だけであって、論理的思考ができるわけではなさそうです。
・・・と思っていたら、
な、なんと、
ChatGPTが正解を答える瞬間がありました。
ChatGPTがいきなり覚醒?! しかし・・・
正解を即答した瞬間
幼女2人がそれぞれ自分の馬に乗っている。
そこを通りかかった王様がこう言った。
「2人で馬に乗ってレースをしなさい。勝った馬の主の方に宝を与える。ただし、後でゴールした方を勝ちとする」
2人の幼女は相手より先にゴールしないよう、のろのろとレースをしていた。
このままでは、いつまでも勝負がつかない。
だが、たまたま通りかかった賢者の一言を聞いた瞬間、2人はものすごい速度でゴールへ向かっていった。
いったい、賢者は何と言ったのだろうか?
賢者は「今乗っている馬を交換しなさい」と言ったのではないでしょうか。2人が自分の馬に乗っているという条件があるため、互いの馬を交換することで、相手より先にゴールするための動機が生まれるからです。
即答!? しかも正解!!
いままでデタラメを答えていたChatGPTが、いきなり正解を答え始めました。すごい! やればできる子じゃん!
・・・でも、塾でもこういうことはありますよね?
「オレ、その問題知ってる!」というやつ。
自分で考えたのか? 答えを知っていたのか?
ChatGPTが知識に弱いのは2021年までの情報しか持っていないから。昔からある定番のパズルなら、2021年以前の情報として知っていた可能性もあります。
この「わかってないが、答えを知っていた」疑惑を裏づける問題がありました。
部屋Aには3つのスイッチがある。
部屋Aの3つのスイッチは、部屋Bに置かれた3つの電球にそれぞれつながっている。
ただし、どのスイッチがどの電球に対応しているのかは分からない。
いったん部屋Aから出ると、部屋Bには行けるが部屋Aに戻ることはできない。
あなたは今、部屋Aにいる。 部屋Aの3つのスイッチが部屋Bのどの電球につながっているのかを知りたい。
あなたはどのような行動を取ればいいだろうか?
正解は「スイッチ1をオンにして、数分たってからオフにする。次にスイッチ2をオンにして部屋Bに行く。点灯している電球がスイッチ2、消えているが触ると温かい電球がスイッチ1、消えていて冷たい電球がスイッチ3とつながっている」。
以下の手順でスイッチと電球の対応を特定することができます。
1. 電球1のスイッチ1をONにし、5分ほど待つ。
2. スイッチ1をOFFにし、スイッチ2をONにする。
3. 電球2を確認する。
・点灯していれば、スイッチ2は電球2につながっている。
・点灯していなければ、スイッチ3は電球2につながっている。
4. スイッチ2の場合、電球2が点灯した状態で、直ちにスイッチ2をOFFにする。
・この状態で電球2がまだ点灯しているならば、スイッチ2は電球2につながっている。
・電球2が消えたら、スイッチ3は電球2につながっている。
5. スイッチ3の場合、電球2が点灯した状態で、5分ほど待つ。
・この状態で電球2がまだ点灯しているならば、スイッチ3は電球2につながっている。
・電球2が消えたら、スイッチ1は電球2につながっている。
以上の手順で、スイッチと電球の対応を特定することができます。
惜しいなあ。「5分待ってスイッチ1をオフにする」までは正しいんですが、それが電球を温めるためであることがどこにも書かれていません。
おまえ、「5分待ってスイッチ1をオフにする」だけ知ってただろ?
実際、上記のサイトではこうなっていました。
正解:
最初に「1つめのスイッチ」だけONにする。
数分経過したのち「1つめのスイッチ」を切り、「2つめのスイッチ」を入れる。解説:
論理クイズ「幼女と3つの電球」
詳しい解説は別のページになっていて、このページではスイッチを切る理由が省略されています。ホント、このサイトを参照したんじゃないの?
まとめ:ChatGPTは論理クイズを解けないが、たまにカンニングする
目についた数字を並べて適当な方程式を立ててみたり。
バツをつけられると、小手先で手直ししてつじつまが合わなくなったり。
どこかで聞きかじった正解だけドヤ顔で答えたり。
勉強できない子によく見られる行動です。
ChatGPT、かわいいなあ(笑)
「それっぽい文章を生成する」という機能では人間を超えつつあるChatGPTですが、
論理思考、水平思考はまだまだのようです。
この辺に、AI時代に人間がサバイバルするヒントがあるのかもしれません。
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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