「シンプルなOffice付き」の怖さ
家電量販店のノートパソコンの広告です。
「シンプルなOffice付き!! 62,800円」
職業柄、こういうのが気になるんです。
え? どこもおかしくない?
いえいえ。
「シンプルなOffice付き」というこの表現、
2つの意味に解釈できるんですよ。
1 Officeがインストール済みなので、買ってすぐ使える
2 Officeの中でも機能を絞った廉価版が付いてくる
「シンプルな」という修飾語が
「Office」にかかるのか「Office付き」にかかるのか
という話でもありますが、
誤解を生む原因はもう一つ。
修飾語は限定語でもあるんです。
1の「シンプルな〈Office付き〉」の場合、
Officeインストール済みのパソコンは全部シンプル。
これは修飾用法。
ところが
2の「〈シンプルなOffice〉付き」の場合、
Officeの中にシンプルなものとシンプルじゃないものがある
これが限定用法です。
「優しいお母さん」は「優しい」
「新しいお母さん」は「新しい」があるかないかで別の人を指す。
これと同じです。
ちょっと前に、
(詳しくはこちらの記事をご覧ください→https://suzukieichi.com/炎上の原因は「文法」にある/)
記事タイトルの中の
「自業自得の人工透析患者なんて」
という表現が問題となりました。
「人工透析患者のうち、自業自得で病気になった人」
「人工透析患者はみんな自業自得だ」
この記事一本のために、
「シンプルなOffice付き」
修飾語を不用意に使うと思わぬ誤読を招く、という怖いお話でした。
