ある歯科医院の話です。
とてもいい先生で繁盛していたのですが、
地域のクチコミサイトでちょっとネガティブな評判が数件書き込まれました。
要約すると「金儲け主義」だと。
普段はそんな感じはまったくなく、子どもにもお年寄りにも丁寧に説明してくれる先生なのでネットでの悪口は意外でした。
ところが、
たまたま受付の電話対応を聞いて、ようやく謎が解けました。
「申し訳ありません、本日は自費の患者様でいっぱいなので、明日以降でしたら……」
(自費=インプラントなどの保険外診療のことです。虫歯治療など治療費が決められた保険診療と違い、医院が好きなように値段をつけることができます。高値をつければ儲かります。)
さて、この「自費の患者様でいっぱいなので」というフレーズ、聞き方によって2つの意味に聞こえてしまいます。
意味1「高いお客様でいっぱいなので、安い虫歯の患者さんは後回しね」
意味2「手術の予定は動かせないので、待っていただけますか?」
もちろん受付の女性スタッフの意図は意味2の方だったと思います。
おそらく医院内では単純に「自費=手術」という同義語で交わされている言葉にすぎず、そこに「高い、安い」というニュアンスを込めてはいなかったのでしょう。
(本当に差別意識があったら、なおさらそういう言葉は使わないはず)
でも、外部の人が同じ文脈で聞いてくれるとは限らないのです。
最初から「本日は手術の予定でいっぱいですので」と言っていれば、親知らずが痛み始めた患者さんも「手術じゃしょうがないなあ」と受け入れてくれたかもしれません。
2つの解釈が成り立つ言葉、これがよく誤解やトラブルの原因となります。
しかも自分では自覚しにくいところが厄介。
営業や販売の定型トークも、第三者に聞いてもらう機会があるといいですね。
意外な「エラー」を発見できるかもしれません。
合同会社ロジカルライティング研究室 代表
ベストセラー参考書「小論文のオキテ55」シリーズ著者
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされた敗北感をきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢され、NHKの教育バラエティ「テストの花道」にも出演。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーとなる。
現在は社会人教育に転身し、製造、IT、建設、エネルギー業界を中心に大手企業60社以上の社員教育に携わる。「受講した翌日、契約が取れた」「険悪だったリームの雰囲気が変わった」など即効性のあるノウハウが支持される。
「世のつまらねえ研修を撲滅し、楽しく学べて役に立つ魔法に変える」がモットー。