東京都職員採用試験Ⅰ類B 2021年の問題です。
(1)
別添の資料から、誰もが安心して働き続けられる東京を実現するために、あなたが重要であると考える課題を200字程度で簡潔に述べよ。
(2)
(1)で述べた課題に対して、都はどのような取組を進めるべきか、あなたの考えを述べよ。
■設問の言葉に注目!
「誰もが安心して働き続けられる」とは、誰がいつまで働くことなのか?
公務員試験で「誰もが(anybody)」という言葉が出たら、少数派や社会的弱者も視野に入れることが重要です。
■(1)の書き方について
(1)は「資料1によると〜。資料2では〜。以上より、◯◯が課題である」という形で書きます。
段落は分けなくてもいいです。なので最初の1マスも空けません。
一般的に内容説明問題は200字だろうが300字だろうが段落を分けないのが普通です。国語の記述問題と同じです。
ただし最後の「あなたの考えを述べよ」の設問では段落の構成が大事なので、最初の1マスを空けて段落に分けて書きます。
■資料の解釈
【資料1】
上のグラフはワーク・ライフ・バランスに関する「希望」と「現実」のギャップですね。
・「仕事を優先したい人」に対して「現実に仕事優先」になっている人が男性は2倍、女性は3倍になっている。
・女性は「家庭を優先したい」人よりも「現実に家庭優先」になっている人が多い。
・上記の傾向は2007年から変わっていない
解釈が割れそうなのは下のグラフです。
・男性はほぼ変わっていない
・女性は全体的に就業率が上がっている
・いわゆるM字曲線はゆるく、形が変わっていない
・65歳以上になると就業率は下がる
全部書けばどれかは当たるんですが(笑)、200字に収まらなくなります。
■「M字曲線」に言及すべきか→不要です!
理由1:昭和の頃に比べたら平坦に近いM字曲線をいまさら出題するのは不自然です。
理由2:次の資料2「離職理由」では「結婚、子育てのため」が複数回答では7位の14%、最も重要な理由としては3位の8.5%と微妙な数字です。出題者がグラフで示したいメインのメッセージとはいえません。
■「65歳以上」に言及すべきか→書くべきです!
理由1:設問に「働き続けられる」という文言があります。出題者は「生涯現役」を念頭に置いているはずです。
理由2:女性の就業率が上がったというだけなら棒グラフで済みます。男女ともに折れ線グラフを使っているということは、男性にも見られる「変化」がポイントであるはずです。
【資料2】「初職の離職理由」
・離職理由、最も重要な理由ともに「仕事が自分にあわなかったため」がトップ
・1位より大きく下がって人間関係、労働時間、賃金などが並ぶ
・「結婚、子育てのため」の順位は低い
【都の課題(問題点)】
以上より、「誰もが安心して働き続けられる東京」を実現するための課題(解決すべき問題)は
・仕事と家事に追われている
・仕事内容や待遇に不満を持つ人が多い
・高齢者の就業率は低いまま
ということになります。
【(1)解答例】
資料1によると、希望に反して仕事優先になっている人が男女とも多いことがわかる。また女性は就業率が上がっている反面、家事優先になっている割合も増えている。さらに65歳以上の高齢者の就業率は男女とも低い。また資料2を見ると、仕事内容が合わない、労働条件がよくないなどを離職理由に挙げる人が多い。以上より、仕事や家事に追われ余裕のない状態、仕事とのミスマッチ、高齢者が就業しにくい現状が都の課題である。
【(2)の書き方】
(1)と(2)合わせて1000字以上1500字以内。(1)で200字使っているので、(2)は900字以上書けばOKということになります。
「どのような取組を」と問われているので冒頭から「こんな取組を」と書いてしまう人も多いんですが、それではベタな提案しかできません。
(2)は「問題提起/原因分析/解決策」の三段落構成で書くのがいいですね。
たとえば、こんな構成です↓
第一段落(問題提起)
・「誰もが安心して働き続けられる」とは、女性も高齢者も男性も自分に合った仕事で生涯現役でいられることである。
・合わない仕事に追われると心身の健康を害したり、生きがいを失ったりしてQOLが損なわれる。所得も伸びず経済が縮小する。子どもを作る余裕もなくなって少子化が進む、などなど。
第二段落(原因分析)
・仕事に追われるのは企業の効率が悪いからだ
・効率が悪いのは合わない仕事をやっているからだ
・女性の負担が大きいのは家事が女性に押し付けられているからだ
・高齢者が働けないのは年齢だけで採用枠から外れるからだ
第三段落(解決策)
・若者にも高齢者にも、自分の向き不向きを発見して適職を見つける機会を与えよう
・女性の負担を減らすために、家事代行業を普及させよう
・高齢者には雇用されるのではなく、個人事業主として稼ぐノウハウを教えよう
この解決策は公務員志望者はあまり書かないと思いますが(笑)
あくまでも、「鈴木鋭智はこう書く」という試案です。
みなさんだったら、どんな答案を書くでしょう???
2023年東京都Ⅰ類Bの論文の解説はこちらに寄稿しています↓↓
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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