ロジカルライティングで必ず教わるPREP(Point, Reason, Example, Point)。
報連相やビジネス文書では「説明の基本形」とされているんですが・・・
という声も多いんですね。
今日はそんなモヤモヤに答えを出しましょう。
《Contents》
基本の確認:PREPとは?
Point(要点)
Reason(理由 なぜなら〜)
Example(事例 たとえば〜/実際〜)
Point(要点もう一度)
頭文字を並べて「PREP」。
簡潔に、しっかり伝えるための「型」として知られています。
一般的には「結論から話すのがPREP」と思われがちですが、それだけなら職場の会話でも「いいから早く結論を言え!」なんて叱られますよね。PREP以前の話です。
PREPをPREPたらしめているもの、それはReason(理由)とExample(事例)の区別です。
Point(要点):犯人はあなただ!
Reason(理由):なぜなら、この密室にあの小窓から入れるのはあなたしかいないからだ。=推理
Example(事例):その証拠に、窓の内側からあなたの指紋だけが検出されている。=物的証拠
Point(要点もう一度):よって、犯人はあなただ!
理由は頭の中で考えた推理、推測です。
その推理を裏づけるのが物的証拠。こちらは目に見えます。
これがReasonとExampleの違いです。
この辺についてはこちらの記事で詳しく説明しています↓
PREPが成り立つケース、成り立たないケース
PREPが実践しにくい原因の1つが「Reason(理由)」にあります。
「なぜなら〜」という言葉がフィットする文脈とフィットしない文脈があるからです。
「なぜなら〜」は判断や提案に続く言葉
「なぜなら〜」は判断や提案を述べたあとに続きます。
「今日は傘を持っていくべきだ。なぜなら雨の予報が出ているからだ」
「この新製品はヒットが期待できる。なぜならSNSで話題になっているからだ」
「持っていくべきだ」は提案、「期待できる」は判断です。
判断や提案には「なぜなら〜」という理由が必要です。理由を示さないとその意見が正しいかどうか判断できません。
事実に「なぜなら〜」は続かない
しかし、私たちが他人に伝えるメッセージは判断や提案ばかりとは限りません。
単純に事実を説明することも多いですよね。
「いま雨が降っている。なぜなら・・・(ん?)」
「これは新製品である。なぜなら・・・(あれ?)」
目の前で雨が降っているという事実に理由はいりません。降っているものは降っている。
新製品が目の前に置かれている事実に理由はいりません。新しいから新製品、それだけです。
もちろん理由をひねり出して「なぜなら気圧配置がこうだから」「なぜなら来期の販売戦略がこうだから」とReasonを付け加えることもできるでしょうが、
それは気圧配置や販売戦略がメインテーマだったらの話です。
単に「雨が降っている」「これは新製品」という事実を伝えれば済む場面なのに、「PREPの形にしなければならぬ」と大げさな背景を持ち出す必要はありません。
「Point(要点)」にあたる文には「判断、提案」と「事実の説明」の2種類がある。
PREPが成り立つケースと成り立たないケースがあるのはこのためだったのです。
PREPが成り立たないときの対処法
「PREPが使いにくい」のは、冒頭の一文が「判断・提案」ではなく「事実の説明」だからです。
ならば対処法は2つ。
Reason(理由)を省いてしまうか、
Point(要点)を判断・提案の形にするかです。
対策1:Reason(理由)を省いてしまう
「なぜなら〜」が続かない文脈なら、いっそのこと省いてしまいましょう。
Point(要点):いま雨が降っている。
Example(事例1):その証拠に、すでに道路が濡れている。
Example(事例2):外を歩いている人たちも傘を指している。
Point(要点):やっぱり雨は降っている。
いわゆるPREPではなくなりますが、別にいいじゃないですか。
PREPはあくまでも伝える手段の1つです。何が何でも死守しなければならない伝統芸能ではありません。
パーツが合わないなら、外せばいいだけです。
対策2:Point(要点)を判断・提案の形にする
たとえば「雨が降っている」という事実を「判断」に変換してみます。
Point(要点1):いま雨が降っている。
Point(要点2):この雨はまもなく止むだろう。
Reason(理由):これは夕立だからだ。
Example(事例1):遠くの雲の切れ間から日差しが見えている。
Example(事例2):天気予報でもこのあと晴れ予報が出ている。
Point(要点):大丈夫、もうすぐ止むよ。
これなら「なぜなら〜」を入れてPREPが完成しますね。
「いま雨が降っている→So what?(だから何?)」と考えるのがコツです。
実際、事実を報告したあと「それで、おまえはどう思うんだ?」と判断や提案を求められることはよくあります。
そんな場面への備えとして「事実で終わらず判断・提案に変換する」という練習はしておいて損はないでしょう。
まとめ
- 「〜べきだ。なぜなら〜」は成り立つ。
- 「〜している。なぜなら〜」は成り立たないことが多い。
- 事実の説明のときはPREPにこだわらず、Reason(理由、なぜなら〜)を省く。
- どうしてもPREPにしたいなら、Point(要点)を事実のままではなく判断、提案に変換する。
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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