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パラグラフ・ライティングとは?
パラグラフ・ライティングとは、ある程度まとまった文書を書くときのスタイルの一つです。
パラグラフとは段落のこと。段落ごとに内容がまとまっていて、各段落の最初の一文を読めばその段落のおおよその内容がわかるようになっています。
たとえば、次のような文章。
【例文1】
小学校でデジタル教科書を導入することは、子どもたちを荷物の重さから解放するというメリットがある。従来の紙の教科書は平均4.7kgと重いことが難点となっている。そのため肩こりや腰痛を訴える子どもが増えており、ランドセル症候群と呼ばれている。教科書やノートが1kg程度のタブレット1台になれば、子どもたちの負担を軽減することができる。
一方、小学生はタブレットを壊しやすいというデメリットもある。子どものうちは不器用で丁寧に扱うことが難しい。実際、床に落とす、イスの脚で踏む、接続部分に色鉛筆の芯を詰める、鉛筆を挟んだまま閉じてヒンジ部分を破損する、などの事例がある。修理の費用がかかるだけでなく、直るまで勉強に支障が出るという問題もある。
したがって、頑丈で壊れないタブレットを開発すべきである。まずは子どもたちがタブレットを壊す様子を観察し、大人とは異なる使い方を知る必要がある。その上でヒンジや接続部など壊れやすい部分のない構造にしたり、交換しやすい部品にするも考えられる。その分のコストがかかったとしても、子どもたちの健康を優先すべきである。
2つの段落の冒頭の一文を読めば、それぞれの段落がデジタル教科書のメリットとデメリットを述べていることがひと目でわかります。これがパラグラフ・ライティング。
この冒頭の1文のことを「トピックセンテンス(トピック文)」と呼びます。トピックとは話題という意味ですね。
そしてトピックセンテンスに続く文をまとめて「サポートセンテンス(サポート文)」と呼びます。
各パラグラフは「トピック文+サポート文」で構成されるわけです。
これに対して、次のような文章はどうでしょう?
【例文2】
「ランドセル症候群」という言葉がある。ランドセルが重いために肩こりや腰痛を訴える小学生が増えているという。これを解消するためにデジタル教科書を導入しようという動きがある。たしかに小学生には扱いが多少難しく、故障するリスクもあるかもしれない。しかし紙の教科書では体重20kgの1年生でもランドセルの重さは3〜4kgになるといわれており、子どもたちを荷物の重さから解放することには意義がある。修理の費用がかかるなどの課題もあるが、子どもたちの健康こそ最優先すべきであろう。
キャッチーなワードから始まっていますが、「ここからデジタル教科書の話が始まる」とはわかりにくいですね。しかも段落の中でメリット、デメリット、メリット、デメリットと交互に書かれているため、読み手が混乱しそうです。忙しい人はデメリットの部分を見落としてしまうかもしれません。
やはり、わかりやすいのは【例文1】の方でしょう。
パラグラフ・ライティングは、読み手にとって「どの段落に何が書いてあるか」がわかりやすい書き方なのです。
学校でパラグラフ・ライティングは教わらない?
英語には「パラグラフ・リーディング」がある
塾や予備校に通ったことがある人なら、英語の時間に「パラグラフ・リーディング」という読み方を教わったことがあるかもしれません。
これは「各段落の冒頭の1文を読んでいけば全体の内容がわかる。それらをつなげると要約ができあがる」というものです。
英語の入試問題にはパラグラフ・ライティングで書かれた文章がよく出ます。エッセイや小説は別として、欧米では記事や論文などの説明文はパラグラフ・ライティングが基本だからです。
パラグラフ・ライティングで書かれたものをパラグラフ・リーディングで読む。当たり前の話です。受験テクニックというほどのものではありません。
国語の入試問題は「パラグラフ・リーディング」できない
一方、国語、現代文になると話は別です。
現代文の試験に出る文章(評論)のほとんどはパラグラフ・ライティングされていません。上の【例文2】のように段落の中でAの話とBの話が混在しています。
予備校の現代文の授業でも「はい、この1文に赤で線引いて、次の1文は青で線引いてみよう!」と段落の中で対比を見つけることが「読解テクニック」の1つとなっています。
なぜかというと、現代文では「読みにくく、誤読しやすい文章」つまり悪文が選ばれるからです。きっちりパラグラフ・ライティングされた文章は誤読の余地がなく、点差がつかないので試験問題には採用されないのです。
このような入試問題を「お手本」として現代文の授業がおこなわれるわけですから、パラグラフ・リーディングもパラグラフ・ライティングも教わる機会はまずありません。
大学の論文は「パラグラフ・ライティング」
大学の論文、少なくとも修士論文以上になるとパラグラフ・ライティングが求められます。
学術論文は形式を守っていることが最低条件です。「IMRAD(Introduction, Methods, Results And Discussion)」という構成で、引用元の出典を記し、文体を客観的表現で統一する。そしてパラグラフ・ライティングで書かれている。(これらを総称して「アカデミック・ライティング」と呼びます)
内容以前に、これらの形式を守っていないと評価してもらえない世界です。
入試の現代文で「悪文」を学んできた学生に対し、大学教員はパラグラフ・ライティングを期待する。ここに大きなギャップがありますね。
小論文はパラグラフ・ライティングで書こう
では大学入試の小論文はどう書くべきか? もちろんパラグラフ・ライティングが正解です。
採点者は大学教授、アカデミック・ライティングの世界の住人ですから。
手順1:各段落の冒頭の1文を決める
小論文をパラグラフ・ライティングで書くコツは、最初に各段落のトピック文を決めてしまうことです。
たとえば上で紹介した「デジタル教科書を導入すべきか」というテーマなら、こんな感じです。
- 小学校でデジタル教科書を導入することは、子どもたちを荷物の重さから解放するというメリットがある。
- 一方、小学生はタブレットを壊しやすいというデメリットもある。
- したがって、頑丈で壊れないタブレットを開発すべきである。
注意すべきなのは、「デジタル教科書のメリットについて述べる」という題目ではなく「重さから開放するというメリット」と中身をはっきり書くことです。
手順2:冒頭の1文についての情報を加えていく
各段落のトピック文は「大ざっぱ」に書かれています。説明不足です。そのため「なぜ?」「ホントに?」「たとえば?」「だから何?」などいろいろな疑問が湧いて当然です。
それらの疑問に1つずつ答えていけば、説明を補いながら段落が1つ出来上がります。
トピック文 | 小学校でデジタル教科書を導入することは、子どもたちを荷物の重さから解放するというメリットがある。 |
→なぜ重さが問題? | 従来の紙の教科書は平均4.7kgと重いことが難点となっている。 |
→実際どうなの? | そのため肩こりや腰痛を訴える子どもが増えており、ランドセル症候群と呼ばれている。 |
→だから何? | 教科書やノートが1kg程度のタブレット1台になれば、子どもたちの負担を軽減することができる。 |
このほかにも、「昔は問題にならなかったの?→ゆとり教育時代は現在の半分だった」「置き勉じゃダメなの?→家で勉強したいときに教科書がなくて困る」など、疑問やツッコミに答える形でどんどん書き足していくことが可能です。
試験の小論文をパラグラフ・ライティングで書くメリット
大学入試、採用試験、登用試験、資格試験の論文・小論文をパラグラフ・ライティングで書くことには以下のようなメリットがあります。
メリット1:採点者にとって読みやすい→印象がいい
採点者は何百人もの答案を読まされます。しかも大半の答案が段落の中にAとBを混在させた悪文で、うんざりしています。
その中でパラグラフ・ライティングされている答案があると、それはもう砂漠の中のオアシスのように採点者に癒やしを与えることでしょう。
内容以前に、読みやすいだけで上位半分には入ることができます。
メリット2:書き手が迷わない→短時間で書ける
試験本番で時間が足りなくなる原因は、「あーでもない、こーでもない」と書いたり消したりをくり返していることです。
パラグラフ・ライティングなら、トピック文についての疑問に答えていくだけなので迷う余地がありません。
最短時間で書き上げることができます。
メリット3:論旨がブレない→答案のレベルが上がる
思いつくままにグダグダ書いた小論文は、問題提起と解決策が合っていないなど論旨に矛盾が生じがちです。
最初に各段落のトピック文を決めておけば途中で話が変わってしまうこともありません。
独創的なアイデアよりも、論旨に矛盾がない方が高く評価されるのが論文試験です。大喜利ではないので。
まとめ
- 各段落の冒頭に要点を書こう(トピック文)
- トピック文についての説明を加えて段落を埋めよう(サポート文)
- 国語の入試問題はパラグラフ・ライティングになっていないので注意
- 試験の論文はパラグラフ・ライティングで書くと高評価
「文章を書くのが苦手」という人は多いですが、もしかしたらパラグラフ・ライティングという書き方を教わっていないのが理由かもしれません。
書きやすく、かつ読みやすいパラグラフ・ライティング。試してみてはいかがでしょうか?
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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