「PDCA」
わかってはいるけれど、実際には上手くいかないという、あれです。
Plan(計画)→Do(実行)→Check(検証)→Action(改善)
個人レベルで考えたとき、PDCAはまず性格に左右されます。
子供の頃、勉強の計画を立てて、計画通りに実行できた人がどれだけいるでしょう???
小学校の夏休みの宿題から大学時代のレポートまで、計画的に勉強した経験のない人が
社会人になって急に計画的に仕事できるわけがないのです(笑)
もっとも、こういう個人差によるムラをなくすためにあるのが組織なわけですが、
みなさんの身の回りにはこんなPDCAありませんか?
Plan:上層部の希望と大人の諸事情で無茶な数値目標が立てられる。
Do:目標達成を至上命題としてノルマと残業が課せられる。
Check:未達成の犯人探しをして、反省させる。
Action:次こそ頑張ります!
・・・旧日本軍や崩壊前のソ連共産党を思い浮かべてしまいますが、似たような組織はいまでも少なくないようです。
PDCAそのものを悪く言いたいのではありません。
こうなってしまう組織には、PDCA以前に欠如していることがあるのです。
それは「実験思考」。
Plan:「こうすれば売上が伸びるんじゃなかろうか?」と考える。
Do:そのアイデアを実際にやってみる。
Check:工夫をしたグループ(実験群)といつも通りのグループ(対照群)の結果を比較する。
Action:効果があればそれでよし、効果がなければ次の手を考える。
一番の違いは、Plan(計画)が「絶対達成すべきノルマ」なのか「外れるかもしれない仮説」なのかという点です。
仮説にすぎないので、結果はあくまでも「データ」です。
予想したほどの効果がなかったら「こっちではない」というデータを得たことになります。次の仮説に進みましょう。
ところが「絶対達成すべき計画」だと思ってしまうと、
予想に反したことは全て「失敗」とされ、「誰が責任を取るんじゃ?!」という話になってしまいます。
その結果、管理職は守りに入って新しい試みを拒むようになり、現場の社員はノルマと責任追及で疲弊する、というお馴染みの光景になるわけです。
実はこの「実験としてのPDCA」、ソフトウェアやネット通販の世界ではごく普通に行われています。
「ABテスト」という名前で。
Plan:通販のページをこんなデザインにしたら売上が伸びるか?
Do:2種類のページを用意し、ユーザーがランダムにアクセスするようにする。
Check:クリック数や購買額などを比較する。
Action:売れたページデザインを採用。次はキャッチコピーを2種類作って比べてみようか?
アクセスが多ければ1日あるいは数時間で結果が出ます。
結果を比較し、片方を採用し、次の比較実験を考える。
見事にPDCAが回っているじゃないですか。
ここで大事なのは、
売れたデザインのページと売れなかったデザインのページにはっきり分かれるということ、
そして売れなかったという事実を一つのデータとして受け入れていることです。
「売れなかった方は損失じゃないか!」という「モッタイナイ精神」をここで発揮してはいけないのです。
実験で小さく損をしておいて、本番で大きく儲ければいいのですから。
「PDCAを回せない」とお嘆きのみなさん、
PDCAの肝は計画ではなく実験です。
「計画通りに成し遂げよう」ではなく「効果があるかないか試してみよう」と考えましょう。
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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