「あなたの強みを説明してください」
就活のエントリーシートでは定番の質問ですが、
99%の就活生はこれに正しく答えられません。
「私は大学時代、野球部でキャッチャーを務めていて、周りに目を配る力を養いました」
でも本人を見る限り、周りに目を配るというよりは空気を読まないキャラのような。
「最近、どんなことで周りに目を配ったの?」
「えーっと・・・・・・・・・・・・・」
最近のエピソードが出てこないようでは「建前を書いた」と見なされても仕方ありません。
「じゃあ何で『周りに目を配る』とか書いたわけ?」
「キャッチャーやってたんで、周りに目を配るポジションかなあって」
それは「キャッチャーの一般的な役割」であって「自分の強み」ではありません。
大学生に就活指導をするとき、最初の段階ではほぼ全員がこんな感じです。
「てか、何で中学から大学までいつもキャッチャーに選ばれてたの? キャッチャーになれる人となれない人って何が違うの?」
「そうっすねえ、ボールとかランナーとかが突っ込んで来るのを怖がる奴は無理っすね」
それ、それ!「怖がらない」こそ君が「他人より際立って優れている点」じゃないか!
建前ではない「自分の強み」を見つけると、それを軸にこれまでのエピソードを選び直すことになります。
「学生時代の活動」も「将来やりたいこと」もすべての欄を全面的に書き直すことになります。
だから最初の段階で「建前を取り除く」という作業が重要なのです。
この「建前」の中でも厄介なのが「何事も諦めずコツコツ取り組む」です。
「私は何事も諦めず、コツコツ地道に努力することができます。その結果、バスケットボール部でレギュラーに選ばれて・・・・」
本人は「何事も諦めずコツコツ努力する」ことを「善」だと思っているようですが、
周知の通り、いまの日本社会で「何事も諦めずコツコツ努力する」ことは「悪」です。
そんな上司がいるから長時間残業が常態化し、社員がうつ病になったり過労死したりするのです。
「何事も諦めずコツコツ努力する」が大好きなのは学校の先生だけです。
(その証拠に、学校の先生方はサービス残業や休日出勤の常態化を変えようとしません)
「ところで君は何でレギュラーになれたの?」
「諦めずコツコツ努力したからです」
いやいや普通に考えたら、レギュラーに選ばれるのは「コツコツ努力する人」ではなく「上手い人」でしょう。
「何で上手くなったの?」
「諦めずコツコツ努力したからです」
いい加減「コツコツ」から離れなさい!! レギュラーになれなかった人だって努力していたはず。
聞き方をちょっと変えましょうか。
「上手い人と下手な人は何が違うの?」
「バスケ上手い人はドリブルのときの力の入れ方がこうこうで、姿勢と重心のとり方がこうこうで、視野のとり方がこうこうで、シュートのときの踏み出し方が下手な人と比べるとこうこうで・・・・」
おー、今日一番しゃべったね。
「ところで話は変わるけど、大学では何を専攻してるんだっけ?」
「大学の専攻は日本の農業政策に関することで、いま日本の農作物はこうこうで、食料自給率がなんとかで、株式会社の参入にはこれこれの課題があって、海外向けのブランド化の取り組みはこうこうで・・・・」
なんか話し方がバスケの話題のときと似ています。
「君はキチッキチッと分析的に話す癖があるよね?」
「あー、それよく友達に怒られます。相談とかされてもすぐ相手の問題を解決しようとしてしまって『そんなこと言って欲しいんじゃない!』って言われます」
この「分析的に話せる」というのが彼女の強みだったわけです。「コツコツ」ではなかったのです。
「真面目にコツコツ」とか「協調性」とか「コミュニケーション能力」とか「リーダーシップ」とか、
これらは大人の言う「望ましい学生像」、学校の「道徳」に過ぎません。
そんな他人が言う建前に合わせて自分を偽るから、
面接官は「同じような話」を何百人も聞くはめになり、
企業は選考作業にムダなコストばかりかけることになり、
本人は向かない仕事に就いて3年で辞めることになるのです。
一度、建前の呪縛を取っ払ってリセットしましょう。
「自分の強み」が見つかるのはそのあとです。
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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