2学期が始まると、学校の先生方は出願書類の世話で苦労されると思います。
自分の進路や関心分野についてスパッと書ける子はいいんですが、
中には「ボーッと生きてきて、書くことが何もない」という子もいます。
昔、Yゼミの個別指導に来た男の子。見た目からヘナチョコでした。
「帰宅部で、何も書くことないんですよぉ。。。」
帰宅部の人たちって、学校終わってから何やってんの?
「学校終わったら、電車に乗って、駅を出て、熱帯魚屋さんに寄って、家に帰って・・・」
家に帰ってから何してんの?
「テレビ見て、熱帯魚にエサやって、漫画読んで、ゲームやって・・・」
休みの日は何すんの?
「街に出て、熱帯魚屋さんに行って、本屋とか行って・・・」
おいおい、「熱帯魚」何回出てきた???
「ディスカスって熱帯魚飼ってるんですよ。繁殖がめっちゃ難しくて、水質管理が・・・」
いきなり水槽のphの話とか始めました。実は彼、水質オタクだったんです。
「あ、先生知ってます? うちの近所って用水路多いんですけど、日本にはいないはずの水草が繁殖してるんですよ」
今度は水草の話を始めました。いきなり饒舌なマシンガントーク!
ところで君、どこ受けるんだっけ?
「T農業大学です」
よし、面接で何聞かれても水草の話をしてこい!
翌年、帰宅部の女の子が来ました。金髪でゴスロリ風です。
その子も、何を聞いても「いやぁ、あんまり・・・」みたいな感じ。
私もだんだんイライラして、声を上げてしまいました。
「つーか君さあ! 人生で時間とお金とエネルギーつぎ込んだこととか、何かあんの?!」
すると、
「ああ・・・一人で◯◯島に行ってきました。△△を捕りに」
聞いたことのない昆虫の名前を言い出しました。何それ?
「マダガスカルゴキブリも飼ってるんですよ。サバンナオオトカゲのエサにしようと思ったら情が移っちゃってペットになりました」
爬虫類・昆虫オタクでした。
よく見たら、ゴスロリファッションのあちこちに「メタリックなクワガタ」とかの昆虫モチーフが!
ところで君、どこ受けるんだっけ?
「T農業大学です」
よし、何聞かれても生き物の話をしてこい!
さらに翌年、今度は書道部の女の子。
何も掘り出せないまま、面接前日を迎えてしまいました。
「じゃあ、面接の練習でもしよっか。最近気になるニュースはありますか?」
「あの、いじめのニュースとか。。。」
うーん、つまんないね。ありがちだね。
もう、受験とか学校とか抜きにして、ぶっちゃけいま頭の中にあることは何?
「ミドリムシ」
は?
株式会社ユーグレナが上場する前です。東京でミドリムシの入ったラーメンというのが登場して、ちょっとだけ話題になり始めた頃です。
「私、4年前に新聞のベタ記事でミドリムシの話を読んでからずーっとミドリムシに注目してたんです」
そこからは喋る喋る。ミドリムシが日本のエネルギーを支える的なことを2012年の時点で話していましたよ。
で、君はどこ受けるんだっけ?
「T農業大学です」
よし、名前聞かれても「ミドリムシ」って答えろ!
どの子も、「鉱脈」を掘り当てる前と後で表情がまったく違っていました。
自分にとっては日常なので、武器になるとも思っていなかったようで。
ボーッと生きているように見えても、
「帰宅部なので書くことありません」という言葉を
鵜呑みにしちゃいけないんですねえ。
〈メルマガ【論文アカデミー】2021.8.31 Vol.025〉
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
→プロフィールの続きを読む