【視点を増やす】小論文指導は知識を増やすのが先? 思考力を育てるのが先?
「小論文の答案に『調べた知識』を書くんじゃないよ」
と生徒には教えていますが、
教える側が物知りになっておくことは必要です。
知識そのものが必要ということではなく、
いろんな角度から物を見るためにです。
予備校講師って、偏った発言を自由にできるんですよ。
昔は学生運動あがりの左翼バリバリの先生が思想を語っていました。
いまでも「◯◯は善、△△は悪」とか「こういう人間は嫌い」といって「世の中をぶった斬る」先生は珍しくありませんし、それがまた生徒にウケる。
私も新人講師のころはそんな感じでした。自分の価値観で白黒つけていました。
ところが、
小論文で出題される原発とか脳死移植とかテロリズムとか、いろんなテーマを調べていくと
物事にはメリットもデメリットもあって、世の中にはいろんな利害関係の人がいることがわかってくるんですね。
教壇から一刀両断できるほど世の中は単純じゃなかった。
それ以来、何を見聞きしても「別の立場の人もいるよなあ」と考えられるようになりました。
小論文を教え始めたのは成り行きですが、おかげでちょっと大人になれたかもしれません。
「どうしたら思考力を伸ばせますか?」
と聞かれて、私も答えに窮することがよくあるんですが、
私自身も「思考力を伸ばした」わけではなく
「いろんなテーマを勉強した」だけと言った方が正確です。
1つのテーマで何冊も本を読んだり、現地に行ったり、当事者に会ったりしました。
視点を増やすという意味では、
生徒に広く知識をつけさせるのは正しいアプローチといえます。
ただし、あくまでも目的は「書くネタとしてではなく、視点を増やすため」であることを
教える側が理解しておくことが必要です。
〈メルマガ【論文アカデミー】2021.5.8 Vol.007〉

ビジネス書・受験参考書著者
株式会社キャリア・サポート・セミナー顧問講師
「ビジネス書著者のロジック✕予備校講師のわかりやすさ」を武器とする企業研修講師。
若手社員〜管理職の問題解決トレーニングのほか、広報・セールスライティングのコンサルティング、プロの著者を対象とした文章指導など幅広く活動。
公開セミナーでは満席御礼を連発し、「受講翌日に契約が取れた」「職場の人間関係が改善できた」「笑いと学びが濃密で3時間まったく飽きない」などの評価を得るほか、セミナーの内容をまとめたビジネス書『ミニマル思考 世界一単純な問題解決のルール』は韓国、台湾でも翻訳出版される。
代々木ゼミナール講師時代、ロジカルシンキングを高校生向けにアレンジした参考書『何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55』を出版。発売から6年連続Amazonカテゴリ1位、シリーズ累計20万部を超えるヒットとなり、2013年から2014年までNHK Eテレ「テストの花道」に小論文の先生として出演する。
1969年、青森県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了(認知心理学専攻)。