【共通テスト1日目】新時代の国語力とは「名作に感動する力」ではなく「不完全な文章を相対化する力」だった件
大学入学共通テスト1日目、社会、国語、外国語の問題が公表されました↓
https://www.yomiuri.co.jp/nyushi/kyotsu1/
国語はほぼ想定内でした。
第1問の評論も第2問の小説も、本文以外にも資料が登場しました。
図表は出ませんでしたが。
【第1問 評論】
対比と前半/後半のマトリックスを考えると・・・
前半1~3ページ目
中世から近世(江戸時代)までの妖怪観
中世:理解を超える現象を「妖怪」として恐れた
vs
近世:フィクションのキャラクターとして描かれた
後半 4ページ目
近代(明治)からの妖怪観
常識:合理的思考で妖怪という迷信を否定した
vs
筆者:人間の内面という未知で不気味なものの投影として妖怪がリアリティを取り戻した
もっとも、
近世になって認識が変わった理由がスルーされていたり、
近代の話が本当に妖怪を信じる話なのか人間についての比喩なのか判然としなかったり、
ツッコミどころの多い文章ではありますが、
そこで受験生を「???」と悩ませつつ、別資料として芥川龍之介「歯車」を引用する余地になっています。
いずれにせよ、
中世(リアル)→近世(フィクション)→近代(リアル)
という変化が理解できれば、難しくはなかったと思います。
【第2問 小説】
作品自体は面白くも何ともないんですが・・・
それを「面白くない」と断言する当時の実際の批評を資料として並べているところが面白い(笑)
最後の2つの設問が、「この批評の内容」と「批評に対する反論」という構成になっています。
「登場人物の気持ちが云々」という作品内の理解ではなく
「作者はこう書けばよかったのに」というメタ視点が設問になっている点が新しいですね。
新制度で最初の現代文のテストを見て、気づきました。
作品外の資料と並べることによって、
「完成度の低い文章」でも出題することが可能となったようです。
実際、完璧な作品を読んで感動できることより、
「そういう意見もあるよね」と相対化できることの方が役に立ちますからね。
フェイクニュースの溢れる現代ではなおさらです。
この複数資料という形式、
国語のテストの歴史の中で大きな転換点となりそうです。
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