プレゼンテーション=説明すること
と理解している方も多いと思いますが、
「言葉で説明すること」とは限らないんです。
昔、イタリアのジョット・ディ・ボンドーネという画家は
バチカンの教皇が芸術家をリクルートするために遣わした使者の目の前で
フリーハンドで正確な円を描いてみせた
という逸話を残しています。
これが史実かどうかはさておき、
プレゼンテーションの本質って
「見せる」ことなんです。
実物を見せること、とは限りません。
1980年代、豊田商事事件という巨額詐欺事件がありました。
お年寄りに金の地金を買う契約を結ばせて、
でも金の現物は渡さず、お金を騙し取ったという事件です。
被害総額2000億円という日本では史上最大規模の詐欺事件だったのですが、
当時中学生だった私には、
中継しているマスコミの前で社長が刺殺されたことの方がインパクト大きかったですね。
この豊田商事の手口が巧妙だったんです。
おばあちゃんに契約書を書かせたら、
その両手を握ってこう言うんです。
「おばあちゃん、泥棒に盗まれると困るから
金塊はうちで預かっておきますけど、
いまおばあちゃんが買った金の重さは
このくらいなんですよ!」
と、おばあちゃんの手をグイッと押し下げる!
これで「重い金塊を買った」という実感を与えるわけです。
現物がなくても「見せる」ことって、できるんですよ。
まあ、犯罪者なので褒めちゃいけないんでしょうけれど、
詐欺師というのはプレゼンのテクニックを知り尽くした人たちなので、
学ぶところは多いものです。
言葉のプレゼンで
行き詰まりや物足りなさを感じたら、
五感へのアプローチを試してみるのも
いいかもしれません。
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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