フジテレビの10時間会見に限ったことではありませんが、
記者会見の質問って効率が悪いですよね。
おそらく記者たちには「暴きたい事実」があって、問い詰めて白状させたいのでしょうが、
「おまえがやったんだろ!」と言われて「やりました」と素直に答える人はいません。
こういう不毛な質疑応答を見るたびに思い出すのが、
ドラマ「白い巨塔」(2003年)の裁判シーンです。
ドラマ「白い巨塔」の名シーン
財前教授(唐沢寿明さん)の医療過誤を問う裁判で、弁護士の関口(上川隆也さん)が質問します。
関口:しかし、里見先生や東先生は、あなたの診療に問題があったと証言していますよ。
財前:(不機嫌そうに)結果論で責任をなすりつけられるのは迷惑です。
関口:人の死は結果論で片付けられるものでしょうか? 財前さんは、自分の肉親が同じケースでなくなっても、結果論だから仕方がないと言えますか?
被告側弁護士:異議あり! 只今の質問は一般論とすり替えようとするものです。
財前:ふっ(笑)、構いませんよ。お答えいたしましょう。
関口:ぜひお願いします。
余裕の財前、ここからドヤ顔の専門家トークが始まります。
財前:がんという病は、その成り立ちや発展の仕方において千差万別なのです。特に本件のように、高度な鑑別診断が要求されるようなケースにおいては、治療方針が議論される可能性もありえます。しかし私は、あらゆる可能性をこれまでの経験に照らし合わせて、十分に検討したうえで、最善の治療を選択しました。
よって、たとえ私の母親がまったく同じケースで亡くなったとしても、それが十分な経験を積み、高度な技術をもった専門医が選択した治療の結果であるなら、納得いたします。
関口:なるほど。要するにあなたは選択の結果、最善の治療を行ったということですね?
財前:その通りです。
関口:よくわかりました。では、もう一つだけ聞かせてください。
佐々木庸平さんの治療に関してはどんな選択肢があったんでしょう? 医学に不案内な原告にもわかるように話してもらえますか?
調子に乗ってきた財前、ときどき冷笑を浮かべながらドヤ顔トークを続けます。
財前:フフッ(笑)大きくは、手術をして根治に賭けるか、手術をせずに化学療法と放射線治療を行うかの2つの選択肢がありました。そしてそれぞれの治療法がまた、フッ(笑)細かい選択の積み重ねなのですが、ここですべてを申し上げましょうか?
そして関口の反撃スタート。
関口:その必要はありません。手術以外に選択の余地があったのか、私はそれだけが聞きたかったのです。
では、佐々木よし江さんにお聞きします。あなたはご主人に手術以外の選択肢があったことをご存知でしたか?
佐々木:いいえ、知りませんでした。
関口:おかしいですね。財前さん、あなたは佐々木庸平さんとご家族に手術以外の選択肢があったことを説明なさらなかったんですか?
まさに「語るに落ちる」。
診療が正しかったかどうかを問うように見せかけて、実はインフォームドコンセント(説明と合意)がなかった点を突くという関口の作戦勝ちでした。
記者会見には弁護士を参加させよう
記者会見には、自称ジャーナリストよりも弁護士を参加させた方がいいんじゃないかと思います。
法律の専門家としてでなく、論破王として。
あるいは記者(自称含む)のみなさんはこのドラマを見て勉強した方がいい。
・・・フジテレビですが。
FODで観れますよ。
白い巨塔 第19話 https://fod.fujitv.co.jp/title/4164/4164110019

合同会社ロジカルライティング研究室 代表
ベストセラー参考書「小論文のオキテ55」シリーズ著者
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされた敗北感をきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢され、NHKの教育バラエティ「テストの花道」にも出演。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーとなる。
現在は社会人教育に転身し、製造、IT、建設、エネルギー業界を中心に大手企業60社以上の社員教育に携わる。「受講した翌日、契約が取れた」「険悪だったリームの雰囲気が変わった」など即効性のあるノウハウが支持される。
「世のつまらねえ研修を撲滅し、楽しく学べて役に立つ魔法に変える」がモットー。