定期的に登壇しているセミナーで
受講後のアンケートというのがあります。
「本日のセミナー講師はいかがでしたか?」から
「受付、司会、その他のサービスはいかがでしたか?」まで
いろいろな質問に5段階で答えるわけですが、
その中に
「本日のセミナーのレベル感はいかがでしたか?」
という項目があります。
「5:難しかった 4:やや難しかった 3:ちょうどよかった 2:やや簡単だった 1:簡単だった」
「5:難しかった」や「1:簡単だった」が多ければ
難易度が受講者に合っていないということなので、
テキストの内容や事例の説明の仕方を調整します。
特に「1:簡単だった」は
「若手向けで管理職の自分には物足りない」とか
「もっと高度なことを聞きたかった」など
ネガティブなコメントを添えられることも多く、
受講者とのマッチングに関わる改善ポイントなんですよ。
だからアンケートには結構マメに目を通します。
すると、
ときどき「おや?」と思うことがあるんです。
100人くらい受講者がいると、4~5人は外国出身の方がいます。
やっぱり読み書きのワークではみなさん苦労するんですよね。
先日も全体でワークをやっている間、一人の方に
平仮名の「す」と「お」の書き方を教えていたり(笑)
私のセミナーは結構ハイテンポなので
大丈夫かなあ? 聞き取れてるかな? ついてこれるかなあ?
と心配してしまうのですが、
そんな外国人受講者のほとんどが、
アンケートでは
「1:簡単だった」と答えるんですよ。
ウソでしょ?!
苦労してたでしょ?
いっぱい質問してたでしょ?
それで「レベル低すぎ」って、批判?
まさか、チャイニーズ・ジョークの一種とか?
外国人には難しかったはずなのに、
「1:簡単だった」が日本人より多い。
これがずっと腑に落ちなかったんですよ。ここ2年くらい。
そして先日、
ふと気づいたんです。
もしかしたら、
彼らの「簡単だった」は
「わかった」の意味だったのではないか?
難しい=わからない点が残った
簡単だった=すべて解決できた
だとしたら、
あれだけ苦労して、質問して、
てにをは(助詞)まで直された外国人受講者たちが
そろって「1:簡単だった」と答えるのも筋が通ります。
日本人受講者は「セミナー内容の難易度」を答えるのに
外国人受講者は「自分の理解度、満足度」を答えていた
かもしれない。
もう一度、質問項目を見てみましょう。
「本日のセミナーのレベル感はいかがでしたか?」
「レベル感」・・・たしかに客観とも主観とも取れる表現でした!
皮肉なチャイニーズ・ジョークじゃなかったんですね(笑)
外国人社員との気持ちの行き違いは
こんな些細なズレが原因だったりするものです。
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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