文学部、特に史学科のようなところでは「一見社会問題ではなさそうなテーマ」が出題されますよね。
たとえばこんな問題。
歴史上の事件、あるいは人物をとりあげ、時代の移り変わりによる評価の変化の様相を論じなさい。
たしかに「サイバー犯罪について」「地方経済の衰退について」のような「社会で実害が出ている事案」とはだいぶ違う印象です。
史学科だから、歴史についての知識が問われているのでしょうか?
【ガッカリ答案】
第一段落:北条政子は江戸時代、日野富子や淀君と並び「日本三大悪女」に数えられていた。
第二段落:しかし現代では承久の乱でリーダーシップを発揮した尼将軍として評価されている。
一応、設問の指示には従っていますが・・・
これで各段落400字ずつ、合計800字埋めるのは大変そうです。
こういうときは出発点に戻って、出題者の意図を考えてみましょう。
「歴史上の事件に対する評価が時代によって変わる」ということは、
いまの研究者による評価もいずれ否定されるかもしれない、ということです。
気づかないうちに、現代特有の偏った価値観で解釈しているかもしれないからです。
つまり、この出題の意図は
客観的な歴史解釈の難しさという
「歴史学という分野が抱える問題」だと考えられます。
人々の生活に関わる社会問題ではないかもしれませんが、学問においては大問題。
そうだとすると、書くべき内容・段落構成はこうなります↓↓
【スッキリ答案】
第一段落(具体例=問題提起):北条政子は、江戸時代は日本三大悪女に数えられたが、現代は承久の乱でのリーダーシップが評価されている。
第二段落(原因):江戸時代は儒教の男尊女卑的な価値観に影響されたが、現代は女性の社会進出を評価する価値観に変わったから。
第三段落(解決策):歴史研究者は自分の時代の価値観を自覚した上で、客観的な視点で過去の事実に向き合う必要がある。
先の【ガッカリ答案】が2段落800字で書こうとしていたことを第一段落にまとめ、
第二段落で原因を考察した上で、
現代の歴史研究者の問題という「自分事」に結びつける。
これができたら受験者の上位25%には入れるんじゃないでしょうか?
小論文の段落構成についてはこちらもお読みください↓
「ビジネス国語」によって職場の諸問題を解決する研修講師。
就職試験の論文をほぼ白紙で提出し3社連続で落とされたのをきっかけに論文試験の攻略法を研究。誰でも書ける独自のメソッドを開発した結果、大手大学受験予備校の小論文講師に抜擢される。参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」はシリーズ累計25万部のベストセラーに。
その後、所属予備校が業界最大手から陥落し全国の校舎を閉鎖、自身もリストラされる怒涛の数年間を経験。意思疎通のエラーで混乱していく組織を詳細に観察し「ビジネス国語」を体系化する。独立後は社会人教育に転身し、大手企業の社員研修に多数登壇。受講者との軽妙なやり取りは「研修というより、めちゃくちゃ役に立つエンタメ」と評される。
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