国家公務員総合職、

つまり国家を背負うキャリア官僚です。

 

その採用試験にこんな問題が出たことがあります。

 

「2050年において日本政府が優先的に取り組むべき政策はどのようなものか。あなたの見解を述べなさい」

 

そして謎の資料が添付されています。

『2052 今後40年のグローバル予測』(ヨルゲン・ランダース著)という本から引用された「20の個人的アドバイス」」という部分。

なんかズラーーーーッと並びます。

1 収入より満足に目を向ける
2 やがて消えていくことに興味を持たない
3 最新の電子エンターテインメントにお金を投じ、それを選ぶことを学ぼう
4 子どもたちに無垢の自然を愛することを教えない
5 生物多様性に興味があるなら、今のうちに行って見ておこう
6 大勢の人に荒らされる前に世界中の魅力あるものを見ておこう
7 気候変動の影響が少ない場所に住みなさい
8 意思決定能力のある国に引っ越しなさい
9 持続可能性の欠如があなたの生活の質を脅かすことについて知ろう
10 サービス業や介護の仕事が嫌なら、省エネルギー関連か再生可能エネルギーの分野で働きなさい
11 子どもたちに北京語を習うように勧めなさい
12 成長はすべて良いことだという考えかたから脱却する
13 化石燃料を基にした資産は、ある日突然、その価値を失うことを忘れないように
14 社会不安に敏感でないことに投資しよう
15 相応の義務以上のことをしよう。将来後ろめたい思いをしなくてすむように
16 持続可能性の欠如の中にビジネスの将来性を探ろう
17 ビジネスで、販売量の伸びと利益の伸びを混同しないように
18 選挙で再選を望むなら、短期的に結果が出る公約を掲げよう
19 未来の政治は物質的制約に左右されることを覚えておこう
20 政治において、限りある資源への平等なアクセスは、言論の自由より重要であることを認めよう

 

みなさん、これを見て

何か変だと思いませんか?

 

1や9、12、15はわかりやすいと思います。

1 収入より満足に目を向ける
9 持続可能性の欠如があなたの生活の質を脅かすことについて知ろう
12 成長はすべて良いことだという考えかたから脱却する
15 相応の義務以上のことをしよう。将来後ろめたい思いをしなくてすむように

いわゆる、いま流行りの「持続可能性」というモラルです。

 

この辺に食いつくと、「環境を大事にしよう」的な論文を書くことになります。

 

でも、4とか6とか10とか18とかが、謎なんです。

4 子どもたちに無垢の自然を愛することを教えない
6 大勢の人に荒らされる前に世界中の魅力あるものを見ておこう
10 サービス業や介護の仕事が嫌なら、省エネルギー関連か再生可能エネルギーの分野で働きなさい
18 選挙で再選を望むなら、短期的に結果が出る公約を掲げよう

よく言われるきれいごととは正反対のメッセージ。

要は「環境は破壊されるけれど、自分だけは生き残る方法」という

自己中心的というか功利主義というか、偏ったアドバイスなんですよ。

 

国家公務員の試験で

「2050年の日本の政策」が問われて

この「偏った内容」の資料が添えられているということは、

 

この資料を「正しいもの」としてなぞった論文を書けという話ではないですよね。

 

「変化を食い止めて世界を救う」べきか

「変化を容認して日本だけ生き残る」べきか

という「選択」について論じるのが「出題意図」なわけです。

 

先日お話しした

「世の中の問題を解決する」or「自分が解放されればええやん」

の話と似ていますね。

 

この出題意図に気づいてから

改めてこの資料を見渡すと、

見える世界が180度違ってくるんですよ。

 

この、

見える世界がひっくり返る快感、カタルシスは

中毒になります。

予備校の仕事を辞められない理由です(笑)

 

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