地方の学習塾をお手伝いしたときの話です。

 

ちょうど塾長が困っていました。

若い女性講師(大学生アルバイト)が辞めたがっている。

彼女のモチベーションを上げて、どうにか引き留めたい、と。

 

 

そこで塾長が企画したのが、飲み会です。

しかも豪勢にフグ料理の店に講師全員を招待しました。

 

でもその女性講師、ウジウジして「モチベーション」がまったく上がっていないんです。

 

せっかくのフグにも手をつけず。

 

塾長が「もうちょっと頑張ってみようよ!」とか励ましても、ますます引いているのが横で見ていてもはっきりわかります。

 

 

そこで、試しに聞いてみました。

 

「じゃあさ、もし塾の中で

好きなことだけやっていい

嫌いなことはやらなくていい

って言われたら、どうしたい?」

 

彼女が言うには、

 

子どもたちに勉強を教えるのは好き。

子どもたちとおしゃべりしたり相談に乗ったりするのも好き。

教室の掃除も嫌いじゃない。

書類仕事はあんまり好きじゃないけど、嫌いというほどじゃない。

講師仲間も塾長もいい人なので大丈夫。

 

「ふーん、じゃあ嫌いなことは?」

 

「・・・欠席電話」

 

欠席した子の家に電話をかけて、

「今日の授業はここまでで、何ページが来週までの宿題です」

と連絡するのが欠席電話。

彼女はこれが嫌いだったようです。

「お母さんと話すのが怖い」と。

 

 

大学生にとって、生徒の保護者は一回り以上も年上です。

子どもを産んで育ててきたお母さんと比べたら、自分は教育の経験が圧倒的に少ない。

それで「お母さんの立場が上、自分はずっと下」という引け目を感じていたそうです。

だから怖くて電話できないと。

 

 

塾長はここに気づかなかったんですね。

お母さんと同年代で2児の父で、入塾の相談会から面識があるので、塾長とお母さんは対等なんです。

バイト講師とは視点が違う。

 

考えてみれば、

お母さんだって小学5年生を育てるのは初体験で、

去年から計60人も小5を見てきたバイト講師の方がある意味経験豊富なんですけどね。

 

 

もっとも、理屈でマインドセットを変えようとしても難しいと思ったので、1つだけ提案をしました。

 

「毎回、生徒のふだんの様子を1個褒めて、お母さんを喜ばせよう。

それでも難しかったら、欠席電話は塾長に代わってもらおう。

いいっすよね? 塾長!」

 

「あ・・・はい、いいでしょう!」

 

子どもの様子を褒められたら嬉しいはずで、お母さんの態度も「先生、うちの子をお願いします」に変わると思ったんです。

 

 

後日、この女性講師は苦手だった欠席電話を克服し、塾長に代わることもありませんでした。

 

めでたし、めでたし。

(本来なら、採用の時点で欠席電話の研修をするべきなんですけどね)

 

 

ところで、宴の席でのフグ料理ですが、

彼女が手をつけなかったのは

「お魚、苦手なんで。。。」

 

彼女の分は

スタッフが(私が)美味しくいただきました。

 




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鈴木鋭智(Eichi Suzuki)
ロジカルシンキング&ライティング講師
ビジネス書・受験参考書著者
株式会社キャリア・サポート・セミナー顧問講師
「ビジネス書著者のロジック✕予備校講師のわかりやすさ」を武器とする企業研修講師。
若手社員〜管理職の問題解決トレーニングのほか、広報・セールスライティングのコンサルティング、プロの著者を対象とした文章指導など幅広く活動。
公開セミナーでは満席御礼を連発し、「受講翌日に契約が取れた」「職場の人間関係が改善できた」「笑いと学びが濃密で3時間まったく飽きない」などの評価を得るほか、セミナーの内容をまとめたビジネス書『ミニマル思考 世界一単純な問題解決のルール』は韓国、台湾でも翻訳出版される。
代々木ゼミナール講師時代、ロジカルシンキングを高校生向けにアレンジした参考書『何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55』を出版。発売から6年連続Amazonカテゴリ1位、シリーズ累計16万部のヒットとなり、2013年から2014年までNHK Eテレ「テストの花道」に小論文の先生として出演する。
1969年、青森県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了(認知心理学専攻)。